【復刻 RAZIKURA通信 電子版】 『ライト兄弟の夢よ再び! ラジコンが自力で空を翔んだ日』

無残なミニインファーノ
おもしろうて/やがて悲しき/ラジコンかな 自力で空を飛べると証明したかっ たのか!?

伝説のラジコン集団の名作活動記録を復刻!

最近なかなかラジコンを走らせられないので、10年以上前の走行会の模様を復刻版でお届けしますよ。

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去る9月23日土曜日。ラジコン倶楽部の第八回走行会が行われた。
当電子版ではその模様をレポートする。

今回の走行会にはあらかじめニューマシンの参加が予定されていた。

ラジコン倶楽部発案の誕生日プロジェクトで贈られたタツヤ隊員のタムギア・フロッグと、苦節5ヵ月、ようやくマイマシンを手に入れたオガワ隊員のタムギア・ホーネットである。

このことが何をもたらすか?

言うまでもなく、走行会のさらなるサバイバル化である。

過去の報告を見てもわかる通り、ラジ倶楽隊員たちは、『強さ』でラジコンの善し悪しを測るという間違った価値基準を共有している。

これまで「人のマシンだし…」と遠慮していたタツヤ、オガワ両隊員から、その制約を外してしまったら…!

この第八回走行会が凄惨なバトルロワイヤルと化すことは自明のことであった。

吹き荒れる喧嘩ラジコンの嵐!
生き残るのは誰のマシンだ!?

ラジ倶楽走行会には珍しく晴天となったこの日、聖地・かさだ広場はのんびりと休日を過ごすファミリーで溢れかえっていた。

そんな光景はこれから血で血を洗うラジコンサバイバルを行おうという男たちには眩し過ぎた。

一同は人目につかない広場脇のサイクリングコース付近に陣地を構え、ラジコンサバイバルへと突入していった!

カワモト、タツヤ、オガワ各隊員のタムギアが元気に発進していく。

その脇では、質量にしてタムギアの5倍はあろうかというウチワダ隊員のサベージが不気味なエンジン音を響かせている。

イシハラ隊員サンダードラゴンも健在。元気に走り出した。

その息子・ナオアキ隊員はラジ倶楽最強の呼び声も高いトイラジ・ニスモでジャンプ台をよじ登ろうとしている。

イマイ訓練生はいつものように、少し離れた場所で黙々と自主練中である。

一瞬の平和な時間。

しかしそれはこの後にやってくる激しい嵐の前触れでしかなかった。



きっかけはサンダードラゴンだった。

快調に走行していたこの老兵から、突如なにかを引きずるような異音が!

見ればサンダードラゴン号のシャーシ底面からバッテリーが飛び出しているではないか。

それはまるで切腹した老いた武士がはらわたを引きずっているかのようであった。

そんなサンダードラゴンの姿が、隊員たちの闘争本能に火をつけた!

たちまちそこかしこで喧嘩ラジコンが始まる。

タムギア・フロッグが共食いすれば、漁夫の利を狙いタムギア・ホーネットが針を刺す!

その脇をけたたましい音をたてて猛スピードで擦れ違っていくサベージの恐怖!!

見ればカワモト隊員のフロッグ改はオガワ隊員のノーマルフロッグに返り討ちに遭い、オイルダンパーのシャフトがポッキリ折れている。

一方ではイシハラ隊員のサンダードラゴンはなぜか前輪がもげている。

あちこちでマシンの悲鳴が聞こえ、オーナーたちの笑い声が聞こえる。



数十分後。

各隊員のマシンに多大な被害を与えたこのハルマゲドンは、各員のバッテリーが切れるとともに終結したのであった。

これぞライト兄弟以来続く人類の悲願!
ブラシレス・ミニインファ、夕空にテイク・オフ!!

隊員たちがそんな激しいバトルを繰り広げている頃、私リーダー・ハヤトが何をしていたかというと…かさだ広場の遊具で息子と遊んでいた!(泣き)

この日はただでさえ予定時刻を過ぎて現地入りし、しかも走行会後に仕事が入っていたため早めに現場を後にしなくてはいけなかった私。

しかし息子の要求はそんな事情などおかまいなしなのであった。

私はバトル会場から聞こえる嬌声を耳にしながら、逸る気持ちを抑えるように心の中で呟いていた。

(今日のオレにはブラシレス・ミニインファがあるんだもんね。後であいつらビビらしたるもんね。昨日の時点で走らんかったけど…

そう、この日の私には秘密兵器があった。

それはかねてより手塩にかけて、お金もかけて育て上げてきたミニインファーノ・ブラシレス搭載ver.である。

カワモト隊員に言われるまでもなく、これまでこのマシンはマトモに走ったことがなかった。

普通に走っていてショックステーが折れる事件に始まり、ヤマナカ駐車場でドッグボーンを紛失したり、デニーズ駐車場で大クラッシュして前輪がモゲたり…。

しかしラジ倶楽のモットーでもある『ラジコン、それは一瞬の煌めき』の言葉を胸に、再びパワーアップして復活させていたのだ。

もっとも先ほどの独白にもあったように、走行会前日深夜の試走行では「タイヤは回るのに1cmも前に進まない」という謎の病を発症していたのが不安といえば不安ではあったのだが…。

ようやく息子を納得させた私は、隊員たちの待つ陣地へと戻った。

この時点で、私に残された時間はわずかだったが、「一瞬の煌めき」に賭ける私にはそれで十分であった。

激しい戦いを終えた彼等はすでにまったりモードである。

そこへ私がブラシレス・ミニインファーノを取り出す。

「おぉ!」

とたんに輝き出す隊員たちの目。

(こらぁこの期待に応えなイカン!)

私はデモンストレーションとばかりにタイヤを持ち上げた状態で軽くスロットルを握り込んでみた。

ギュウーーーーーン!

鋭い音とともに回転したタイヤは、その遠心力のあまり1.3倍ほどに膨張する。

「おぉぉぉぉぉ!」

隊員たちの期待が歓声となって発される。

私は静かにミニインファをフィールドに置くと、プロポを握り直した。

一瞬の静寂。
期待と不安がその場を支配した。

「いくぞ!」

私は高らかに宣言すると、スロットルを思いっきり握り込んだ!

シューーーーーーン!!!

鋭い回転音が夕闇迫るかさだ広場の空気を切り裂く。

が!

マシンは1mmたりとも前には進んでなかったのであった!!

ズッコケる隊員たち。

もっとズッコケる私。

直後に隊員たちの嘲笑が沸き起こる!

このままでは終われない私はすぐにマシンを回収すると、思い付く限りの原因を調査し、マシンをバラしていった。

結果、フロントのデフギアを逆につけていたことが判明。

つまりこのモンスターマシンはスロットルを握ると後輪が前に進もうとし、前輪が後ろに進もうとするという、二律背反的駆動系を装備していたことになる。

前後に同じトラクションがかかるのだから、センターボールデフが滑りっぱなしになるのも当然だ。

黙々とピット作業を続ける私。

迫るタイムリミット!

私の心にあるのはただ一つ。

一瞬でもいい、“走行”会なんだから“走行”して帰りたい!

そしてタイムリミットギリギリオーバーの夕方4時45分。

ブラシレス・ミニインファーノの修理が完了、再びフィールドへとその勇姿を見せた。

(今度こそ大丈夫)

私も隊員たちも、祈るような視線をマシンに送る。

私はプロポを握ると、慎重にスロットルを入れていった。

…キュウウウウーーーーーン!

すると軽快なモーター音を残して、ミニインファ号が鋭く加速したではないか!

そしてあっという間にトップスピードに達し、遥か彼方へと走り去る!

「うぉ! 走った!!」

「はぇ~~~!」

隊員たちも口々にその驚きを言葉にする。

私はそれまでのモヤモヤがすべて吹き飛んでいくような爽快感に、興奮した。

(さぁ、折り返して今度はジャンプだ)

私がそう考え、ステアリングを切った瞬間。

マシンがフラフラッと左右に細かく揺らめいたかと思うと、ドンッ! という小気味いい音とともに高く高く、空中に舞い上がったのである。

!!!!!!!

誰もが目を丸くしてその光景を眺めているしかできない。

そんな一瞬の出来事。

私の目にはその様子がスローモーションのように見え、空中に舞い上がる愛車の姿を「美しい」とさえ思った。

我に返ったのは、その愛車が地面に叩きつけられた衝撃音のせいであった。

高く、美しく宙を舞った代償、それは左後輪脱落という形で支払われたのである。

『ラジコン、それは一瞬の煌めき』

私にとって、まさにその言葉を体現した走行会であった。

涙。

(記述者:ハヤト)